広く浅いマーケティング・営業戦略に対し、ターゲットを絞り込んでいくカクテルパーティー効果を活用したマーケティング・営業戦略はターゲットの母数が少なくなるものの、効果が高い手法として注目されています。
マーケティングや営業にカクテルパーティー効果を上手に活用するために知っておくべきポイントをご紹介しましょう。
カクテルパーティー効果は、マーケティング戦略にはもちろん営業活動にも活かせるビジネス心理学として知られています。
相手の興味・関心を把握して、ターゲットを絞り込んだマーケティング・営業を行うカクテルパーティー効果を意識すると対象が限られるという不安もあるでしょう。
カクテルパーティー効果とは?
カクテルパーティー効果の特徴
カクテルパーティー効果とは、多くの情報の中から自分に関係する部分のみを聞き取れる脳の働きにより起きる現象です。
騒がしいパーティー会場にいても、誰かの会話の中に自分の名前が登場すると自然と耳に入ってしまうという経験がある人は多いでしょう。
多くの音が飛び交っていても、自分が興味・関心を抱く内容だけは聞こえるという現象がカクテルパーティー効果です。
パーティー会場だけでなく人が集まる駅や休み時間の教室など、様々な音に溢れた騒がしさの中でも人は自分の興味・関心がある事柄については聞き取ることができます。
人の脳は雑然とした音声情報の中から、自分が興味・関心を抱いている自分に必要な音声だけを自然と選び取り、認識する能力を持っているためカクテルパーティー効果が表れるのです。
“選択的注意”の一つ
心理学ではカクテルパーティー効果は選択的注意の1つと位置付けられています。
選択的注意とは、複数ある情報の中から1つに向けられる注意です。
人の脳は、五感が受け取る情報の全てを同じように処理するのではなく、必要な情報を優先的に選び処理して不要な情報はインプットしないようにできています。
音は耳で空気の振動として受け取り、神経信号に変換されて脳に運ばれて認識されます。
脳では全ての音声情報が同等に処理されるわけではなく選択された一部が優先的に認識されるためカクテルパーティー効果が表れるのです。
雑音はフィルターされて、選択された必要な情報だけが脳で処理されると言えるでしょう。
カクテルパーティー効果を利用した実験
イギリスの認知心理学者コリン・チェリー氏はカクテルパーティー効果の実験を行っています。
ヘッドフォンを被験者に装着し、左右の耳から異なる音声刺激を与えて一方の耳に注意を傾けるように指示して結果を得る実験です。
実験では、注意を傾けなかった方の耳で聞こえるはずの音が聞き取れていない現象が起きました。
そして続けて、注意を傾けない方の耳に被験者の名前を呼ぶ音声を流したところ、注意を傾けるように指示した方の音声を無視する現象が起こったのです。
チェリー氏の実験により、人は注意を向けた情報を優先すること、そして自分の名前には意識が向いてしまうことが分かりました。
カクテルパーティー効果は広告に活用できる
コピーライティングでの活用例
カクテルパーティー効果は自然に起こる現象であるものの、相手の注意を引きそうな情報を上手に使って人為的に起こすことも可能です。
せっかく考えたコピーも、多くの広告に埋もれてしまい相手に届かなかったり、注目されず関心も持ってもらえなかったりすれば、コピーとして意味がありません。
意識的にカクテルパーティー効果を使った、ターゲットに届きやすいコピーライティングの例を見てみましょう。
・後期高齢者になるあなたのためのプラン
・新人営業マンの君が読むべきサイト
・3人家族のドライブなら
・月収100万を目指す人に
・時間の無い社会人に支持されている
・そろそろ帰省したい東北出身のあなたへ
ターゲットの興味・関心を刺激するカクテルパーティー効果を上手に使うと、手応えを感じられるコピーライティングが可能となるのです。
ターゲットの心理と状況を取り入れる
マーケティング戦略や営業ツールにカクテルパーティー効果を応用する場合には、ターゲットの心理と状況を取り入れて相手の興味・関心を刺激することが成功のポイントです。
心理と状況を上手に取り入れることで、自分に関係があると思ってもらえるとカクテルパーティー効果が働いて注目される確率が高くなります。
まずは、困っていることや悩み、目標・信念などターゲットの心理を刺激するようなワードを盛り込みます。
例を挙げると、下記のように特定の心理に置かれたターゲットに響くよう、工夫することが1つ目のポイントです。
・通勤時間が長すぎるあなたに朗報です
・会社に縛られる人生を終わらせませんか?
・ローンの支払いで悩んでいるあなたにこそ
・そろそろマイホームを手に入れませんか?
2つ目のポイントは、ターゲットの状況、つまり性別や年齢、職業や家族構成などを意識したワードを取り入れることとなります。
下記のようにターゲットの状況を絞って盛り込んでいきましょう。
・30代女性の転職を応援
・高卒だからと諦めている人に読んで欲しい
・共働き世帯が選ぶべきローンとは
・営業職なら知っておくべき情報
・新社会人になる君へ
カクテルパーティー効果はターゲット属性を絞り込むことで強く表れるようになるので、相手の心理と状況をしっかりと意識してください。
カクテルパーティー効果を営業で活用する事例
「今なら特別キャンペーンを実施していますよ」や「○名様限定のサービスですので」といったトークを入れても、営業先の反応がイマイチだったという経験を持つ人は多いでしょう。
対象をしっかりと絞り込んでいないキャンペーンでは、反応が悪い場合があります。
営業先にとっては、興味や関心がない状況でキャンペーンやサービスを提示されても、自分には関係がないと思えて選択的注意が働かないのです。
営業でカクテルパーティー効果を効果的に活用する場合には、以下のように具体的なターゲットを絞った表現を使いましょう。
・○○市内で住宅を購入する人限定
・猫ちゃんとの暮らしを快適にしたい人へ
・今のパソコンを5年以上使っているユーザー対象の特別価格
・職務経験3年未満なら必見の講習会
広く浅く営業をかけなければ該当する人が少なくなってしまうのではないかと不安を感じる営業担当者もいるかもしれません。
しかし、漠然としたキャンペーンや告知、サービスで成果が上がっていない場合には、カクテルパーティー効果を意識して選択的注意を向けさせることで、高い営業効果が期待できます。
さらに、営業先とのトークでは相手の名前を意識的に口に出すようにしてください。
認知心理学者コリン・チェリー氏の実験でも、人は自分の名前に無意識に集中することが分かっており、営業トークの中に名前が入ると内容に興味がない場合でも話への集中度が高くなります。
数多くの提案資料、選択肢の中から選んでもらうためには、雑多な情報の1つではなく自分に必要な情報として認識してもらうことが大切で、選択されるためにはカクテルパーティー効果を上手に活用する営業戦略が求められるのです。
まとめ
相手の心理や状況を絞り込むマーケティング・営業戦略は、自分に関係があると感じたターゲットに強く突き刺さるものです。
自分の心理や状況を代弁してくれる存在にこそ、ターゲットは強い関心を抱きます。
広く浅いアプローチで成果が上がらずに悩んでいるなら、カクテルパーティー効果を意識したマーケティング・営業戦略に取り組んでみてください。
また、下記ページでビジネスで使える心理学20選を紹介していますので参考にしてください。